一般社団法人 健康免疫研究機構

驚愕に値する免疫システムの活性化力

1.センシンレンの抗腫瘍効果の検討

造血器腫瘍細胞であるヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ細胞株(U937)、急性前骨髄性白血病細胞株(HL60)、慢性骨髄性白血病細胞株(K562)、急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(Jurkat)、IgA型ヒト形質細胞腫細胞株(H929)をそれぞれ2×105個/mLに調整し、センシンレンを終濃度0.5mg/mLと1.0mg/mLとなるよう添加し、37℃24時間培養後のAnnexin V陽性率を求めた成績を示した。
いずれの腫瘍細胞も対象と比べ明らかなAnnexin V陽性率の上昇が観察されています。このことはアポトーシスを引き起こした腫瘍細胞が多いことを示し、抗腫瘍効果があることを意味しています。

この図は図1で示した造血器腫瘍細胞であるU937、HL60、K562、Jurkat、H929をそれぞれ2×105個/mLに調整し、センシンレンを終濃度0.5mg/mLと1.0mg/mLとなるよう添加し、37℃24時間培養後の生細胞の検出をMTT assayで求めた成績を示した。
MTT(3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide, yellow tetrazole)は生細胞において紫色のホルマザンに還元されるので死細胞が多いほど紫色のホルマザンの生成が起こらないことを表します。
図2の成績はいずれの腫瘍細胞もセンシンレン未添加と比べ明らかな吸光度の減少が観察されます。しかもセンシンレンの添加濃度に依存した腫瘍細胞死が観察されています。

2.センシンレンと他の抗腫瘍薬との抗腫瘍作用の検討

この図は各細胞株に抗がん剤として汎用されるシタラビン(Ara-C)、ビンクリスチン(VCR)の両者に対するアンドログラフォリド(Andro)の抗腫瘍効果を検討した。それぞれの薬剤終濃度をAra-C は1.0mg/mL、VCR は0.1mg/mL、 Androを50μMの濃度となるように添加し、37℃にて24時間培養後のAnnexinⅤ陽性率をグラフに示しました。
検討腫瘍細胞株の種類は左からヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ細胞株(U937)、急性前骨髄性白血病細胞株(HL60)、 IgA型ヒト形質細胞腫細胞株(H929)とし、それぞれの細胞株の色分けは添加した薬剤の種別を表しています。
Andro添加では、すべての細胞株においてAnnexinⅤ陽性率に著明な増加が認められ、腫瘍細胞がアポトーシスを引き起こしていることを示し、抗がん剤と同様な抗腫瘍効果が認められました。

3.腫瘍細胞を使ったアポトーシスの検証

ヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ細胞株(U937)にセンシンレンを1.0mg/mL、抗がん剤Ara-Cを1.0μg/mLと終濃度となるように調整し、24時間培養後にアポトーシスの過程で生じる断片化DNAをTUNEL(TdT-mediated dUTP nick end labeling)法で検出した。 発色試薬としてDABを使用したので茶色に濃染した部位が断片化DNAであり、センシンレンおよびAra-Cを添加したもので陽性を示すが対照には認められない。

抗炎症作用について

アンドログラフォリドのジテルペン構造は、4つのイソプレンによって構成され、抗細菌性および抗炎症性に働くことが知られている。

THP-1細胞は急性単球性白血病患者から純化された細胞株であり、グラム陰性菌由来LPS(リポポリサッカライド、内毒素)を添加すると単球の機能としての炎症反応に関与する炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6を分泌します。
図1はTHP-1細胞を4×105個/mLに調整し、アンドログラフォリド濃度を終濃度3,5,10μMとなるように添加し、37℃で24時間培養した後にアンドログラフォリド未添加対照としたTNF-αおよびIL-6の産生量をそれぞれの培養液から測定した。
図1から添加したアンドログラフォリド濃度に依存したTNF-αおよびIL-6がTHP-1細胞からの分泌を抑制していることが示されています。この成績からアンドログラフォリドは抗炎症作用を示していることが分かります。